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マネジメント初心者だった私が意識して訓練した2つのこと

進捗管理と対人調整、そして信頼の積み重ね〜

エンジニアとして何年か経験を積んでくると、「マネジメント」という言葉が、ふと自分ごととして聞こえてくる瞬間があります。

チームのまとめ役になるとか、若手の育成を任されるとか。
あるいは、案件の責任を少しずつ背負うようになったとき。

私もそんなふうに、自然とマネジメントの役割を持つようになりました。
ただ、最初から「これが正解」と分かっていたわけではありません。
むしろ、毎日が試行錯誤の連続でした。

この記事では、私がマネジメント初心者として最初に意識的に「訓練」した2つの経験を、実体験ベースで紹介したいと思います。


1つ目の訓練:「日報のやりとり」がつくった信頼関係

最初にマネジメントらしいことをしたのは、新卒の女性エンジニアをサポートする立場になったときでした。

同じ現場ではあるけれど、彼女は別のプロジェクトに“ひとり”でアサインされていました。
技術的な支援やタスクの指示はプロジェクト側が見るという前提だったので、私は主に進捗管理リスク管理、そしてモチベーションを見守る役割に。

仕事のスペースも別々。毎日顔を合わせるわけではありません。
そこで提案したのが、日報のやり取りでした。


Excelベースの日報、毎日の返信

日報といっても、そんなに形式ばったものではありません。
シンプルなExcelファイルに「今日の所感」だけ書いてもらう。
それに対して、私が毎日返信する。それだけです。

でも、これを1年間続けました。

返信の内容も、アドバイスというよりは「ちゃんと見てるよ」「その気づき、いいですね」といった、ちょっとしたコメントが中心です。


リリース後に現れた悩み事

彼女のプロジェクトが無事リリースされ、少し落ち着いたある日。
いつもの日報に、悩み事が書かれていました。

でも、その悩み事は自分で解決したいので、解決できたとしても、内容は特に報告しないと思う、と書いていました。

私は「まずはリリースお疲れさまでした。ゆっくり休んでください」とだけ返信しました。私は、彼女の意思を尊重し、深追いはやめました。

数週間後、対面で話したいと連絡が来て、ちゃんと対面で説明を聞くことができました。


日報を「続けたい」と言われたとき

その時点で彼女はすでに一人立ちしており、日報を続ける必要はありませんでした。そのため、日報の終了を提案したんです。でも彼女はこう言ったんです。

書いたほうがペースが整うので、これからも書きます。
読むか読まないかはお任せします。

もちろん、私はその後も読み続け、返信も続けました。
そして、私がその現場を離れるその日まで、日報は続きました。


この訓練で学んだこと

マネジメントって、かっこよく「管理」することではないのかもしれません。
誰かが頑張っている日々をちゃんと見ていること。
そして、「一人じゃない」と思える関係を作ること。

日報はその手段のひとつにすぎませんが、続けることの力を強く実感した経験でした。


2つ目の訓練:「言い返す勇気」が信頼を作った

次の訓練は、全然違うタイプのプロジェクトでした。
私はBP(ビジネスパートナー)、ある大手企業のプロジェクトにマネージャーとして参画することに。いわば“雇われマネージャー”。
周囲はその企業のプロパーの管理職ばかり。

最初のうちは、正直かなり萎縮していました。


最初は「技術だけやっていよう」と思っていた

相手は、普通に無理難題を投げてきます。
でも、「自分はBPだし…」と思い、黙って受け止める日々。
とりあえず、技術的な部分だけ頑張ろうと割り切っていました。

そんな私に、ある日プロパーのマネージャーがこう言ったのです。

もっと反論してくれていいんですよ。

「えっ?」と思いました。


無理難題に見えていたのは、ただの“想像”だった

よくよく考えてみれば、彼らは私の立場や状況を完全には理解していない。
だから「これならできるんじゃないか?」という“想像”の範囲で要望を出していたわけです。

そこで私は、少しずつ姿勢を変えていきました。

  • こちらの状況を丁寧に説明する

  • 技術的な観点から、できない理由とできる代替案を提示する

  • 「分からせる」ではなく「共有する」つもりで話す

すると、ちゃんと話は通じるようになってきました。
むしろ、こちらの説明に対して「なるほど、それならこうしよう」と柔軟に動いてくれるように。

最終的には、企業の役員、別のグループ会社のマネージャーとの調整もできるようになりました。


この訓練で学んだこと

マネジメントをしていて、「反論する=対立する」ではありません。
大切なのは、相手に伝えるべきことを、誠実に伝えること。

そして、技術者としてのバックグラウンドがあるなら、技術的に正しいことを言えばいい。
それは立場に関係なく、信頼を築く一番の近道になるのだと感じました。


最後に:マネジメントとは、信頼を築く小さな訓練の連続だった

今回紹介した2つの訓練。
どちらも特別なスキルや肩書きが必要なものではありません。

  • 誰かの言葉に毎日ちゃんと返信すること

  • 自分の立場をきちんと説明すること

  • 技術的な根拠を持って話すこと

地味で、時間もかかります。
でも、それを少しずつ積み上げた先に、ちゃんと「信頼」という形が残っていました。

もしあなたが、これからマネジメントを始める立場になったとしたら。
難しく考えすぎず、まずは目の前の人と向き合うことから始めてみてください。
それが、きっとあなたらしいマネジメントの第一歩になるはずです。